心を尽くして

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「褒めているんですよ?さて、近藤さんの所へ行きましょうか。 」 怪訝そうな表情をした千香に、ふふと笑みを返して沖田は歩き始める。そうして、ある部屋の前に立つと、足を止めた。今まで通り過ぎて来た部屋とは違う、何か、こう、神妙なオーラが漂っている。 「近藤さん、総司です。森宮さん連れてきました。」 「入れ。」 低いとも高いとも取れない声が聞こえると、沖田はスーッと障子を開き、中へ入る。 「さあ。森宮さんもどうぞ。 」 沖田に中へと促され、千香はそれに頷き、恐る恐る足を踏み入れて、軽く頭を下げた。 「悪かったな...。」 部屋へ入ると謝っているのに不機嫌そうな声が降ってきて。声の主を確認せずとも誰かは容易に分かった。千香はめちゃ嫌そうに言うじゃん。どかたさん。と心の中で毒突く。 「いえ...。」 決して目を合わせないよう伏せ目がちに、そう返す。 「森宮、千香さんだね?先ずは座りなさい。 」 ふと視線を上げると、かの有名な近藤勇が目の前にいた。 「はい。 」 近藤に従い腰を下ろすと、部屋を見渡した。通された部屋には、沖田土方近藤以外にも人間が居るのは言うまでもない。異質なものを見るような視線が千香にグサグサと突き刺さる。 「私は、壬生浪士組局長の、近藤勇という者だ。それで...、君のことを聞いてもいいかい?別に疑っている訳ではないんだが、幾分不可解な点が多くてね。 」 苦笑いを浮かべながらも近藤の目はしっかりと千香の顔を見ている。近藤のその様子に、早くもこの時代の背景を読み取ってしまう。気付かないうちに沖田も土方の隣に座っていた。早く、と促されている様な気がして、困惑したが、下手に嘘を言っても、あらゆる面で優れた者達を集めているので、すぐにバレてしまうだろうと、本当のことを言おうと思い立った。さらに、バレてしまえば何をされるか分からない。もしかしたら、命が危ぶまれるやも、と。
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