報い

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「あれ。お口に合いませんでしたか?やはり、みたらし団子は醤油味の方がいいですよね、 」 「いいえ。此方の方が、美味です。醤油も良いものですが、甘い方が断然良い。 」 沖田はいつに間にやら、早くも一本団子を平らげてしまっていた。そしてすかさず二本目を手に取り、口一杯に頬張るとゆるゆると頬が緩んでいく。 「総司兄ちゃんもやっぱり甘い方がええよね!千香姉ちゃん、俺を苛めるけど団子美味いから、また来たるわ! 」 沖田を見上げ、ケラケラと笑う銀次。 「沖田先生。千香様は、以前聞いたお話の通り、本当に何でもお作りになられるのですね!しかも、大変美味に! 」 泰助も、活き活きとした表情で沖田に語りかけている。千香はその様子を見てああ、なんだか兄弟みたいだなあと微笑ましく感じた。 「銀次。壬生から此処へは少し遠いから、今度は私が迎えに行くからな。泰助。嫁にするなら、千香さんみたいに器量の良い(ひと)にすると良い。 」 「そ、そんなに器量ええことないですよ! 」 「まあ、気が抜けると後は中々調子を取り戻すのに時間がかかるが。 」 先程、銀次と話していた際に方言が出ていたのを聞かれてしまったため、そこを突っ込まれると痛い。 「沖田さん!それ、褒めとんのか貶しとんのかよう分かりません! 」 途中まで褒めてくれているのだと嬉しくなっていたのに、沖田がちらりと目線を此方に寄越した後言い放った一言に、その高揚感が削がれた。 「...なーんか総司兄ちゃんと千香姉ちゃんって、痴話喧嘩してるみたいに見えるなあ。 」 銀次のその一言で、ピシリと空気が凍りつき。 「銀次、千香様には藤堂先生というれっきとした恋仲の方が居られるんだぞ。沖田先生にもそういう方が居られるかもしれない。何も知らずに、そういう失礼極まりない言葉は止せ。 」 すかさずその空気を察した泰助が、銀次に諭す。 「ええんよ。何でも、思ったことは言ってみるものよ。まあ流石に度過ぎとるのはいかんけど。 」 千香が、にこりと銀次に微笑んで。 「それに、そう誤解される様な言動をしてしまった私にも非がある。だから、私も銀次も反省しなければな。 」 沖田も千香にうんうん、と頷き。 「ほんまに夫婦になればええのに!俺、二人はお似合いやと思うけどな。 」 「うーん。あはは...。そうだろか? 」
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