報い

80/82
212人が本棚に入れています
本棚に追加
/264ページ
返す言葉が見つからず、苦笑いを浮かべた。 「私としては、千香さんさえ良ければ嫁に迎えたいところだが、 」 「え。何言よんですか沖田さん...。 」 沖田のまさかの発言に、千香の鼓動が早まっていく。 「というのは、嘘で、 」 ええ!?と千香はずっこけた。 「嘘なんですか!もう!心臓に悪いこと言わんといてください! 」 「というのも、嘘で、 」 「も、もうええです。突っ込まんときます...。 」 千香はこれ以上沖田の応対をするのは疲れると思い、皿や湯呑みなどを盆に乗せ部屋を後にした。 「あの、沖田先生。 」 「ん?何だ泰助。 」 千香が去った後、沖田の顔が何処と無く寂しそうな顔に見え、泰助は思わず声をかけた。 「沖田先生は、本当は、千香様のことをす...。 」 沖田はそこまで言いかけた泰助の口に人差し指を当て。 「それ以上は、言うな。 」 「本当は、総司兄ちゃんは、千香姉ちゃんのこと好いとるんやな。せやから、さっきも。 」 「こら。銀次も。...千香さんには、決してこのことを口外しないように。 」 沖田の有無を言わせぬ雰囲気に、こくりと、黙って二人は頷いた。
/264ページ

最初のコメントを投稿しよう!