国が揺らぐ

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「それでは、そろそろ帰いもす。今日はあいがとうござおいもした。またどっかでお会いしもんそ。 」 「はい。色んなことを伺うことが出来て嬉しかったです。ありがとうございました。 」 西郷と千香のどちらが払うか軽く揉めた勘定を何とか千香が払い終え、人で溢れかえっている通りに出たところで西郷が踵を返した。その後ろ背を見えなくなるまで見送った後、醤油を買うべく店に向かっていたとき。 「千香!...やっと見つけた。皆帰りが遅いって心配してるぞ。 」 「へ、平助。そうなのね。ごめんなさい。 」 後ろから声が聞こえ、どきりとし振り返ると。先程まで西郷と話していたものだから、少し罪悪感を覚え。 「買い出し終わったのか?荷物重そうだし持つよ。 」 「いいよ。あと買うのはお醤油だけだし。結構重いからいつも最後にしちゃうのよね。 」 「分かった。じゃあ、醤油は俺が持つ。 」 「ありがとう。 」 思えば久し振りに藤堂と話をした気がする。お互い何かと忙しくゆっくり話す時間もなかった。とすれば、藤堂が伊東と接する機会も多かったと考えるのが当然である。以前、伊東からなんとか引き離そうとしたものの失敗に終わってしまったことから、暗黙の了解で伊東に関する話題はタブーとなっており。千香はふとそんな考えが浮かび気持ちを暗くしながらも、それを悟らせないよういつも通り明るく振る舞った。
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