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にこにこと笑いつつ、襖を閉めた。厨房へと向かう千香は、思考を巡らせて。別に泊まるくらい怒らないよね?でも、あの様子だったら分かんないか。先程の怒り具合から、許しをもらうのは難しいかもなと唸った。茶を淹れ、お千代の店で買った茶菓子を持って部屋へと戻る。部屋へ入ると、また土方が居て。もう、用は済んだでしょうに。というか自分で部屋飛び出しといて今度は何なのよ。と軽く睨みを効かせながら、自分用にと淹れておいた茶を土方へ出し、部屋を出ようとすると。
「森宮。俺は、訪ねて来たやつをその日に帰すほど人でなしじゃねえぞ。 」
ムスッと機嫌の悪そうに土方は言う。え...。バレてるし。何で。ふと松本に視線を移すと、顔の前で掌を合わせて平謝りしていて。
「すみません。土方さん。夕餉の沢庵増やしておきますから! 」
「まあ、今俺は気分が良いんだ。それで許してやるよ。 」
むっかー!!別に許してもらわんでもいいし!千香の肩が土方への怒りでわなわなと震えた。それを見て松本は、くすくすと笑い。
「仲が良いんですね。 」
「良くない! 」
「良くありません! 」
二人の声が重なって。ますます松本の笑い声が大きくなる。
「っもう!私、夕餉の支度をしてきます! 」
千香は苛立ちのあまりドスンと音を立てて立ち上がると、スパン!と襖を閉めていく。
「森宮さんが、女子にも関わらず此処で働いている理由が分かる気がします。 」
「そうか。初対面の人間でも分かるもんなんだな。 」
土方は緩々と顔の緊張を解いていき。夕餉の時間まで、久し振りに思い出話や自分たちの近況を語り合った。
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