心を尽くして

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厨房へ戻ると石鹸が固まっていて完成していたので、八木家へ渡す用の分を包む。残りは自分用にしよう。 久し振りの石鹸だ。この時代に来てから風呂に糠袋しかなかったので、なんだか懐かしい感じがする。 石鹸を持ち、八木家の人たちが住む母屋へと向かう。部屋へ通され、千香は源之丞と雅の二人と向かい合う形になり。 「御迷惑をお掛けしてすみませんでした。これ、お礼に宜しければ貰ってください。 」 風呂敷に包んだ石鹸を手渡す。 「おおきに。えーと、これは...何や? 」 包みを開け、石鹸を手に取ると源之丞は首を傾げる。 「ええと、シャボンです。簡易的にですが、作ってみました。お風呂に入るとき、使ってみてください。米糠で作ってあるので、特に害はありません。 」 「シャボン...か。初めて見たわ。あんさん、こんなもの作れて凄いなあ。ありがたく受け取らせてもらうで。...そらそうと、もう体は大丈夫なん? 」 源之丞は石鹸を雅へ手渡すと、千香に尋ねる。 「いえそんな...。はい。もうすっかり良くなりました。その節は本当にお世話になりました。 」 千香は三つ指をついて、深く頭を下げた。 「ほら、頭上げなはれ。あんさんはよう家の手伝いもしてくれて、器量もええから頼りにしとります。何や困ったことがあったら何でも言うてええからね。 」 源之丞はにこり、と人の良さそうな笑みを浮かべて。 「はい!ありがとうございます!では、失礼しますね。 」 母屋を離れると、千香は遅めの朝餉を摂った。一人分なので、いつもより簡素に仕上げた。 「あーあ!皆帰って来るまで暇だなあ。 」 頬杖をつきながら、深く溜め息を吐いた。
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