忠実に生きていくということは

2/25
212人が本棚に入れています
本棚に追加
/264ページ
「...あった。森宮、峻三。...池田屋事件で新選組に助けられた恩義から、新選組の最期まで隊士として尽くした。晩年は、故郷の松山にて妻子を持つ。原田左之助と仲が良かったとされる。...私が幕末に行く前、こんな記事無かった。歴史を変えてしまったの? 」 あまりの衝撃に固まっていたが、段々と頭が働いてきて。 「じゃ、じゃあ、平助は!?どうなったの? 」 すかさず『藤堂平助』と検索をかける。しかし、藤堂の最期は変わっていないことを確認し、ボトリとスマホを床に落としてしまう。 「戻らなきゃ、幕末に。大事な人たちを助けるために。 」 ベットから降りてのそりと立ち上がると、千香は床に落ちたスマホを拾い上げた。___...ブルルル。電話がかかって来た様だ。 「お母さんから?何の用だろう。...もしもし?お母さんどしたん? 」 「千香!驚かんといてよ?千香が飛んで喜ぶ物見つけたんよ! 」 「...何?私今急いどんやけど。 」 一刻も早く幕末に戻る方法を見つけたい千香には、久し振りの母との電話でさえも苛立ちを募らせるものにしか感じられず。 「ええけん聞いて!あのね、お父さんの実家の蔵あるや?その蔵の片付けしよったら、古い写真が出て来てね。見たことも無い人が写っとったけん、誰だろおもてお義父さんに聞いたんよ。ほんなら、自分のお父さんの若い頃の写真じゃって言て、それだけやなくて、新選組の隊士だったって言うたんよ! 」 「え...?今、何て...。」 母の言葉に、嫌な汗が出た。鼓動も警鐘を打つ様に早くなっていく。 「峻三、さんって言うんやって。森宮峻三さん。凄かろ?曾祖父さんが新選組やったとか、なかなかおらんのんやない?嬉しかろ? 」 「う、うん。ありがとう。教えてくれて。またね。 」 「ちょ、千香待って...。 」 母の制止の声をも待たず、千香は通話を終わらせた。どうやら、自分が池田屋事件の時に助けたことがきっかけで、峻三は新選組隊士になった様である。 「私、若い頃の曾祖父ちゃんと会ってたってこと?そんなことって...。しかも、私が新選組に引き入れたってことになるの、かな。 」 嫌な汗が千香の額を伝った。 「じゃ、じゃあ仮にもし、私がまた歴史を変えたとして、峻三さんが死んじゃったら、私は生まれなくなる...? 」
/264ページ

最初のコメントを投稿しよう!