『胡蝶の悪夢』

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   人間には出来ない真似だ。2度も産まれるなんて。  卵から、蛹から。  私は…………今から命を手放す私は、これからどうなるのだろうか。私の自我が残るとは思えない。  それは、奴等を見ていれば察しがつくと云うもの。  生前の面影もなく、生者に食らい付く死者達。  私が彼等の一人に腕の肉を齧られたのは、ほんの数時間前。  体温は上がり続けている。  私はこのまま緩やかに死を迎え、彼等の仲間へと転化するのだろう。  …………世界中の死者が起き上がり、生者を襲うようになってから3週間。地球上にどれだけの生存者がいるのか定かではないが、どうやら私はここまでらしい。  彼等の細胞は死んでない。  心臓は動いているし、脳細胞だって機能しているだろう。  だが、あんな姿になってまで動き続けるモノを、人間だとは云いたくない。  彼等は四肢だけになっても、まだ動くのだ。細胞が死に絶えるまで。  化物だ。あんなの。  私は嫌だ。化物になんかなりたくない。  だからこれは、ささやかな反抗。  最後の残された時間を使った精一杯の反抗だ。  私が死んで転化するよりも、立て籠った小屋のバリケードが奴等に破壊されて生きたまま食い殺される方が先だろう。貪られて、喰らい尽くされて、果てる。  そして、動ける部分が残ってれば、電池切れまで動き続けるのだろう。  真っ平御免被る。  そんなものは。  
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