明日も、コンビニ裏で

5/16
前へ
/16ページ
次へ
「おじさんは、なにやってるひと?」 ごく自然に、タメ口で喋っていた。垣根を感じさせないひとだと思った。 「あそこ」 彼は右腕をまっすぐ前方に伸ばし、住宅街の方をを指差した。 「あそこの角のとこに、古いアパートあったでしょ。あれを今、壊してんの」 「えっ」 「解体工だから、俺」 カイタイコウ。言葉の響きはあたしの中で、数秒遅れて漢字変換された。 解体工、か。 「やべ、時間だ」 おじさんは立ち上がってお尻をはたき、立ち上がった。 「明日も来る?」 ごく自然に、そう訊いていた。 「来るよ。3時から30分だけ、休憩なんだ」 にっと笑って、彼は言った。 その貴重な休憩に、煙草を吸うでもなくスマホをいじるでもなくアイスを食べるのか。 そう思うとおかしくて、わたしはくすくす笑った。
/16ページ

最初のコメントを投稿しよう!

29人が本棚に入れています
本棚に追加