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「……四半世紀も年上でした」
思わず敬語になってしまう。
「難しい言葉を知ってるね」
ざらりとした心地よい声で、おじさんはあたしを褒める。
嬉しいけれど、子ども扱いされた気がして少し悔しかった。
「高2ですから」
「若いねえ」
「おじさんも、若く見えます」
怒ったような口調になってしまった。
そのまま黙って蝉の声を聞いていた。
おじさんたちが解体していると言っていたアパートが、ずいぶん低くなっている。
「もうすぐこの現場もおしまいだなあ」
おじさんが、半分ひとりごとのようにつぶやいた。
「次の現場は、どこなの?」
「未定」
「未定?」
「うん。いつもぎりぎりに知らされる」
「そうなんだ」
「うん、ちっちゃい会社だから」
「そっか」
「大人になったからって、誰もがシステマティックに業務の回る企業に勤められるわけじゃないのさ」
おじさんの言葉はいちいち説教くさくなくて、むしろなにげない会話に癒されていることに、あたしは気づいた。
それは不思議な感覚だった。
出会ったばかりの、25歳も年上の男のひとに感じるこのシンパシーをうまく形容する言葉を、あたしは持ち合わせていなかった。
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