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「ねえ、解体工ってどう思う?」
さゆりにたずねると、共用PCに向かっていた1年生の松岡が顔を上げた。
「カイタイコウって何ですか?」
「ほら、老朽化した建物を取り壊すひとたちいるじゃん。解体業のプロフェッショナルだよ」
さゆりがあたしの代わりに答えた。ギャルっぽい見た目の印象に反して知識が豊富でフットワークも軽い彼女は、時期部長と目されているひとりだ。
「え、なに葉月、解体工に興味あんの?」
「興味っていうか……ただちょっと気になるっていうか」
「気になるって? 何が? 誰が?」
好奇心旺盛なさゆりは身を乗りだしてきた。松岡も手を止めてこちらを見ている。
ためらいながらも、あたしはおじさんとのことをざっくりと話した。
アイスを一口もらったことだけは、省いて。
さゆりは微妙な顔をした。
「葉月……それさあ、やばくね?」
「え、やばいって?」
「仲良くなって、あんたに手ぇ出す気だったらやばいじゃん」
「そんなんじゃ……」
さゆりの強い口調にうろたえつつ、どう反論したらいいかわからない。
「いくらいいひとそうに見えたって、おっさんはおっさんでしょ。女子高生をそういう目で見てないって言いきれる?」
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