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「なんで?」
「なんでって……」
「あたし、中途半端なのもう嫌なんだよね」
強い口調になってしまった。
教室の入口をふさいでいるあたしたちを、みんなが通りづらそうに出入りしてゆく。
「おまえにちゃんと言いたいことがあるからだよっ」
突然、敬広が大声で言った。呆気にとられて固まる。
教室に残っていた数人が好奇の目で見ていることに気づいたとき、
「来いよっ」
敬広は、あたしの手首を引っぱった。
廊下をゆくひとたちの視線を浴びながら、敬広はあたしを自転車置き場まで連れて行った。
グラウンドのざわめきに、蝉の声が重なる。
「中途半端なんて、俺だってしたくねえんだよ」
敬広は、怒ったような口調で言った。
なんだ。ちゃんとシリアスなモードになれるんじゃん。
変な感心をしながらも、あたしは腕時計を気にしていた。
今からなら、かっ飛ばせば3時に間に合う。いや、少し過ぎるかな。
「おまえ、最近俺のこと避けてただろ」
ああ、完全に遅刻だ。
どうしよう、待っててくれるかな。今日は何味のアイスにするのかな。
「聞いてんのか?」
「……聞いてるよ」
「ちゃんと付き合いたいんだよ、おまえと」
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