1人が本棚に入れています
本棚に追加
「見せて。」
そう言いながら、A先輩はC先輩から写真を受け取る。
フラッシュがたかれていたので、明るくはっきり写っている。
自分とCの背後、映り具合からして、比較的近い位置にその女子高生は写っている。
「B、写真撮る時、気づいた?」
「ううん!この距離なら余裕で気づくよ・・・」
A先輩が写真を差し出せば、困った顔でB先輩が受け取って写真を見つめる。
「てか、誰?とりあえず、3年ではないね。うちの楽器の、パートの子でもない。」
「やっぱり、タメじゃないよね?私のパートにもいない。Aは?」
「いや、知らない・・・。同じパートの後輩とかなら気づくよ。」
改めて、3人で写真を見る。
変な空気の中で、B先輩がうわずった声で言った。
「もしかして、噂の幽霊じゃない・・・?」
「いや、それはないよ。」
「うん、違うでしょう。」
B先輩の推理を、A先輩もC先輩も否定した。
幽霊だったら、透明ですけていたり、ぼんやり写っていたりする。
でも、この写真に写る謎の女子高生の写り方に、おかしいところはない。
生身の自分達と変わらないぐらい、ハッキリと写っている。
「きっと、撮る瞬間に飛び出して写ったんだよ。」
「でも、撮る側のうちが気づかないとかおかしくない?」
「暗かったじゃん?それに、うちらにピンと合わせて取ってたんなら、奥まで見てなかったんじゃない?」
「そうだけど・・・」
動揺するB先輩をA先輩が落ち着かせたところでC先輩は言った。
「とにかく、この子を探そう。この『いたずら』は無視できない。」
吹奏楽は上下関係に厳しい。
部員を閉じ込めたまま帰ったのもマズいが、先輩の呼びかけを無視して隠れていた挙句、こんな風に写真に写り込んで怖がらせるのは悪質と判断したのだ。
最初のコメントを投稿しよう!