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(変ね・・・いくら人数が多くても、ほぼ毎日会っているから顔は覚える。それなのに、誰もわからないのはおかしくない?)
「何で誰も知らないんだろう?」
自然と、みんながその言葉を口にしていた。
だから、注意深く写真を見ていたB先輩の一言は、とても説得力があった。
「違う!!これ、うちの、吹奏楽部の子じゃない!」
「え?違うの?」
「違う違う!!てか、生きてる人間じゃない!!」
「はあ!?なんで!?すけてないじゃん?」
泣きそうな顔で言うB先輩にA先輩が言えば、震える手でみんなに見えるように写真を見せながら言った。
「この子が着てる制服、『冬服』じゃん!?こんな真夏のクソ暑い時期に、真冬のかっこうするわけないじゃん!?」
「あ!?・・・・・・・・本当だ・・・・・・・・!」
写真の中央、涼しげな『夏服』で写るA先輩とB先輩の背後。
踊り場の奥の方で、しっかりと『冬の制服姿』で写る女子生徒。
意味を理解した瞬間、その場の全員がゾッとしたそうだ。
冷却スプレーをかけていない場所まで、一気に全身が凍えるように寒くなったという。
その後、写真に写る女子生徒が、噂の幽霊かもしれないと結論付けた。
『かもしれない』・・・と、あいまいなのは、問題の写真が行方不明になってしまったから。
お祓いをするため、一度A先輩が持ち帰ったのだが、お寺に行く日、写真は消えてしまった。
どこを探しても見つからず、現在でもどこにいったかわからないそうだ。
正体がバレるのをさけた女子生徒の幽霊が、持ち去ったのではないかと言われているが、本当のところは今でもわからない。
写真もないので、調べようがない。
ただし、現在でも、写真に写っていた女子生徒に似た長い黒髪の幽霊が、別館で目撃され続けている。
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