柴田さん

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 間もなく私の番。私は柴田さん側のレジに並ぶことを選んだ。  柴田さんはこのラーメンとおにぎり、特保のお茶のみを購入する客を早く捌くだろうし、隣のレジのバイト風の女の子は何だかもたついている。  ――――ところが。 「こちら温めますか」 「お願いします」  まさかのラーメン温め。さすがに朝からラーメンは食べないだろうと油断していた。この作業服の男性客は夜勤明けか何かなのかもしれない。 「こちらのくじを1枚お引きください」  しかも、ある一定の金額を超えたらしく、くじ引きまでやっている。男性客がガサガサと当たりくじを何とか引き当てようとゆっくり穴のあいた箱をまさぐる。  お願い、応募券であって欲しい。商品が当たってしまうと、引き換えに時間が掛かる。 「……当たりました。今交換しますか? 」 「お願いします」  当たってしまった。それに、レジ脇にはない商品だったようだ。柴田さんはレジカウンターを飛び出し、お菓子コーナーへ向かった。 「二番目にお待ちのお客様どうぞぉ~」  万事休す。隣のレジの女の子に笑顔で呼ばれてしまい、私はトボトボとそちらに向かった。  別に何でかんで柴田さんのレジでなくては駄目ということではなく、ただ柴田さんの機械的に的確な動きを間近で見たいだけであって、そんなに大したことでもないのだけれど。  レジの女の子は、新人で篠田さんというらしい。名札に“研修中”と書いてある。  どうりでもたついている訳だ。何をやるにも困った顔をして、辿々しい。  まるで私みたい。私は新人でも何でもない、十年勤めてるそこそこの中堅社員だけど。  こうやって頭の中ではあれやこれやと考えられるのに、人と話すのは苦手で仕事も遅いから、恐らく職場では浮いていると思う。むしろ目の上のコブ、厄介者で、早く辞めて欲しいと思われているかもしれない。  それにしても、レジが遅すぎる。私は自分もトロいので苛ついたりはしないけど、女の子は何やら私の選んだサラダを見つめて困った顔をしている。  バーコードを読み取っても、ピーと警告音のようなものが鳴ってしまう。  それはきっとサラダの消費期限が過ぎているのかも。  私はそう思ったけど、それをこの子に教えてあげる勇気が出ない。違ったら恥ずかしい。 「柴田さぁん!! 」  私がモジモジしている間に、女の子は柴田さんを呼んだ。気付けば、柴田さんのレジは捌けていた。
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