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「しのさん、もうすこし頑張りましょうね」
「はい」
消え入りそうな声で私が返事をすると、先生は静かに成績表をとじて差し出した。
でも、先生のお顔は優しく笑っている。テストの結果がこんなに悪かったのに、先生は厳しくお叱りにはならなかった。
それでも私のこころは、深い深い海に沈んでしまったかのように暗かった。
私はこの学園の落ちこぼれ。
ここは、優秀で健康な女の子たちしか入れない世界でたったひとつの学園。
姉妹の中で私だけがお母さんやおばあちゃんと離れて、この学園で寮生活をおくっている。
それなのに私は、テストの点はいつも最下位。おまけにお友だちのようにおしとやかにするもなんだか苦手だし、お料理やお裁縫はお友だちに手伝ってもらってばかり。どうして私がこんなところに入れたのか、今となっては本当に不思議だった。
「しのさん、どうしたの?元気がないみたい」
教室に入ると、心配そうにお友だちのあいこさんが話しかけてくれた。
「うん。今度もテストの点が良くなかったの……」
「まあ、そうなの。でも大丈夫よ。また一緒にお勉強しましょう」
あいこさんは、私の手をそっと握って励ましてくれた。
学園のお友だだちは、みんな聖母のように優しい人ばかり。しかも美人揃い。
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