マリアたちの楽園

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何のお話だろうとどきどきしながら講堂に行くと、驚いたことに私以外の全校生徒が集まっていた。 「待っていました。こちらへいらっしゃい」  震える足でステージの上の先生のところに行くと、講堂のみんなが私をきらきらした目で見ているのがわかった。 「しのさん、あなたがどうしてこの学園にいるのか、今日はそれをお話する日です」  退学のお話ではないのだろうか。みんながいるのも忘れて、思い余って先生に聞いてしまった。 「先生、私はマリアにはなれないのでしょうか」 「ええ。あなたはマリアになるためにこの学園に来たのではないのですよ」  愕然としている私を落ち着かせるように、先生はゆっくり続けた。 「あなたは、マリアよりももっと素晴らしいもの、つまりマリアたちをマリアたらしめる存在なのです」  先生の細い手が私の頭を撫でた。 「よくぞここまで、健康に育ってくれました。世界で最後の男性が亡くなってからというもの、全人類はあなたを待ち望んでいたのです」  いつまでも来ないおしるし、成績が良くないのに退学にならない理由。もし先生が言っていることが本当なら、私は――。  先生は私の肩を抱いて、講堂のみんなに言った。 「みなさん。彼が私たちのメシア、最後の希望よ」
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