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「なぁ、連休予定ないなら温泉行かね?」
そう言って何気なく誘ってくれた兄に「温泉?夏に?いいけど海行きたい!」なんて子供っぽく返してしまったことを後悔した。
兄の運転にすっかり安心しきって寝ていた俺が起きた時には、立派な温泉宿についたところだった。
サンダルにTシャツ半ズボンで、荷物にはしっかり海パンを忍ばせている俺は、門をくぐるのもなんだか気恥ずかしくて、のろのろと車から降りて後ろの方から兄を眺めていた。スタスタと門も玄関も通り抜けて中に入っていった兄は、少ししてから車の方へ戻ってきた。
「車は移動させてくれるって。あんまり離れてないから歩いていけるらしい。」
兄は「荷物これだけ?」と俺の荷物も持ち、これまた立派な日本庭園へと続く道へ入っていく。
どうやらこの庭園の奥に離れがあるみたいだ。専用のカードキーで中に入る。恥ずかしくてずっと俯き加減だったが、目の前の景色に思わず感嘆が漏れる。
「す、すげぇー!!!海じゃん!風呂もある!何この部屋!?すごい!!!!」
1部屋でそこまで広くはないが、目の前は開放的な大きなガラス戸にオーシャンビューだ。
さらにバルコニーには2人でも広々入れる半露天がついている。本館からこちらの入口にかけては、日本庭園もあり厳かで落ち着いた和のイメージだが、部屋に入るとふんだんに使用されたガラスがキラキラと海の光を集めて華やかな和モダンのイメージへとがらりと印象を変える。
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