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ケーキを2つ箱に入れ、確認をとる。
「こちらでお間違いないですか。」
「はい。」
「お持ち歩き時間のお時間はどれくらいですか。」
「15分くらいです。」
「かしこまりました。」
いつもと同じ数の保冷剤を手早く準備する。
「では、お会計失礼します。ガトーショコラとタルト・オ・ポム、2点で760円です。」
花男は背負ったリュックから財布を出すために、左手に持った袋をレジカウンターの荷物置きに置いた。
見なくてもわかる、“いつもと同じ”駅前の花屋の袋だろう。
これがもうひとつの理由。
いつも花を持っている。
先日は、いっぱいのかすみ草がちらりと見えた。
その前には名前のわからない、淡いピンクの細工物みたいなたくさんの小さな花。
今日は何を持っているのかと、花男が財布を開く間にこっそりカウンターの向こう側を覗いて見た。
すると花屋の白い袋から、鮮やかな青と紫の紫陽花が溢れていた。
目を見張る程の色合いと、そのこぼれそうな様子に花が特別好きなわけでもない私でも、思わず見とれた。
(綺麗、、、。)
「、、、こういうの、好きですか。」
目の前の声にハッとして視線を戻すと、花男が財布からお金を出しかけながら自らの手元にある紫陽花を一瞥し、こちらをちらりと見た。
「え、あ、はい。」
その目はとても静かに澄んでいて、思わずこう答えてしまった。
不躾にじろじろと見過ぎていたな。
謝ろうとしたが、それより早く相手が口を開く。
「じゃあ、あげます。」
「え?」
言うなり花男は、財布を置いて紫色の紫陽花を丁寧に手に取った。
そのまま紫陽花を私に差し出す。
袋にはあと青と赤紫のものが1枝ずつあるらしい。
私は訳のわからないまま気付くと差し出された紫陽花を受け取り、お礼を言っていた。
「ありがとう、ございます。」
花男は言葉を返す代わりにか、会釈するように頭を少し下げる。
そしてまた財布をとると、今度こそお金を取り出し会計トレイのカランカラン、と良い音でのせていく。
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