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目をまん丸くさせこちらを凝視する男が漏らした一言であったが泉にとって重要なのはそんな聴覚から得た情報ではなく、目の前の視覚から得る情報である。 目の前にはスーツ姿の男が二人。 一人は支えるように肩を抱き、もう一人は凭れるように体重を預けている。 因みに後者の男は見知った顔であり、己の目がおかしくなければ年上恋人の南である筈。 『仕事明けの打ち上げで飲みすぎてるだけ』とか。『心配して送って貰っただけ』とか。 本来ならば考えれる筈が目の前の光景がショックすぎて頭が回らない。 南のカッターシャツは第三釦まで外され少しだけはだけた胸元が余計に色っぽさを醸し出している、更には酒で色づいた赤い顔で隣の男に凭れかかっているのだ。 その光景が視覚を通して脳裏に焼きつくと泉の中でわなわなと嫉妬が渦巻いた。 「.....へえ」 泉が己の中に渦巻く嫉妬の炎を感じている間、南を抱いている男は泉の姿を上から下までじっくり見ると吐き捨てるように言い放った。 「恋人の泉チャンてどんだけ可愛い女だよって思ってたけど、普通の青臭いガキじゃないか」 最後まで言い終われば鼻で笑う始末。 『普通の』『青臭いガキ』 あまりの言い草に男の言葉が頭の中でぐるぐる回ると現在の己の姿など気にせず顔を赤くして反論した。 「可愛い女じゃなくて、青臭いガキで悪かったですねっ! でも貴方には関係無いと思いますがっ? 」 相手が恋人を抱く不届き者だろうが、己よりも何倍も南にお似合いの男前だろうが初対面の明らかに目上の人間であった為、敬語となってしまう。 「まあ、関係無いと言えば関係ないが...ただ...ちょっとばかり上司として部下の性的嗜好を心配してしまうな...」 そう言うと男はもう一度泉の姿を上から下までじっくり見た。
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