5人が本棚に入れています
本棚に追加
指先は檸檬の香り
窓を開ければ排気の臭い
胸中の隘路を酸素が捩じ込む
青い稲穂に突き抜けた白
優雅に頚をもたげる
桐月間近に点々と儚む
凡て幾億の内の些細な事象と。
濃紺に散らす淡い飛花
溢れる儘に沈んで往けたら
底冷えの銀で赦されるだろうか
爪先は氷解の名残
綿を被せた泥濘で欠伸
肺胞が怯んで噎せ返る宵闇
無数の針穴を天井に開けて
輪郭を曖昧に照らす
何時しか流れる路を見誤る
視線を交わすことさえ戯言に過ぎず
蒼白の灯りは虚像なのだ
離れ過ぎた単位こそが事実で
軸のずれた邂逅など起こり得る筈も無く
底冷えの銀で揺蕩う儘に
最初のコメントを投稿しよう!