花が好きな君だから

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 僕にとっての初デート。気合を入れるべきだろうとプランを考える。  所詮高校生。大した事は出来ないが、せめて楽しい思い出にしたい。その位は僕でも夢見て良いはずだ。  十一時に待ち合わせる。彼女も僕も時間五分前についた。彼女の服装は一般的なワンピース。花の模様があるのが彼女らしい。  だけど、僕は彼女に全くときめかなかった。 「それじゃいこうか」  僕の言葉に彼女は頷き、僕についてきた。  最初は昼食。女性向けの美味しいと評判の喫茶店で軽食を取る。  確かに美味しく、クラブサンドと食べている彼女は少し嬉しそうに微笑んでいた。  そして移動して映画を見る。恋愛要素が薄いけど、それでもしっかりと恋愛をしていて楽しめる作品だ。  終わった後に彼女は楽しそうに、映画のパンフレットを買った。  そして、最後にアクセサリーショップ。花のぬいぐるみという不思議な物に彼女の視線は集中していた。  そしてデートは終わった。待ち合わせ場所で解散。計画通りだし、彼女もある程度喜んでくれた。  だけどわかっている。これは失敗だ。それも大がつくほどの、最悪の失敗だ。  彼女は部分部分で楽しんではいたが、基本無口で無表情だった。何よりも、僕が彼女に全く魅力を感じなかった。 「それじゃ。また月曜日に」  彼女はお礼を言い、僕に頭を下げて立ち去ろうとした。 「ま、待って!」  僕の予想外の大声に、彼女は足を止めた。 「明日!また僕とデートして!」  そこで僕は新しい彼女の表情を見た。それはうんざりするような顔だった。やっぱり今日は楽しくなかったらしい。 「明日!花を一緒に見に行こう!」  うんざりする顔から一変して彼女は向日葵のような満面の笑みを浮かべ、うなずいた。  僕は相当緊張していたらしい。最初から花を見に行けば良かったのだと、ようやく気づいたのだった。
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