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虹がかかる場所に冒険はある
「おーい!ゲリト!」
澄み切った青空の下。
大声で名前を呼ばれた赤毛の少年は額に浮かんだ汗を拭いピッチフォークをさばく手を止めた。
黄金が褪せたような色の干し草の匂いにすん、と鼻をすすり向こう側へひょっこり顔を覗かせる。
すると坂の上からひょろりと背の高いブロンドの少年が手を振り駆け下りてくるのが見えた。
ゲリトはその少年に叫び返す。
「ヴァスティ!どこに行ってたんだよー!」
「ちょっとな!」
「約束!また忘れやがって!」
やんちゃな子犬のように目の前に転がり込んだヴァスティにゲリトは勢い良くピッチフォークの先を突きつける。
「ゲ、ゲリト!ちょ、ちょっと待て!待てって!お前聞いたか!」
「聞いたかだって!お前こそ聞いてたか!昨日うちで父さんに干し草運ぶの頼まれてただろ。お前はいつもそうやって都合の悪い話だけ聞いてないんだから!」
悪びれもしないヴァスティはぷりぷりと怒るゲリトのピッチフォークを慣れた手つきで下げさせにっこりその顔を覗き込んだ。
そのまるでの毒気のない笑顔にゲリトは仕方なく黙る。
見るからにやんちゃな少年ヴァスティは村の教会で育てられた孤児だ。
そしてこの大人しそうな少年、ゲリトは村の役人の一人息子。
二人はこの村で唯一同じ歳の子として兄弟のように育ってきた。
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