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「それなら他の場所へ移動してる途中なんじゃない?」
「でも野営してる気配もないだろ。」
「山の中にいてこの池に水を汲みに来たとか?」
「それなら沢がいくらでもあるだろ?」
「なのに何度も見かけられたんだよね」
「ああ。でもなんか変だよな。本当に妖精だったりして!」
「馬鹿言えよ今どき妖精なんてみんなどこかへ行っていやしないだろ」
「でもばあさんは妖精だって言ったんだろ?」
風ひとつ吹かない明朝の池はしんと静まり返っている。
あまりの他の生き物の気配のなさにゲリトはもしヴァスティと一緒でなかったら自分はとっくに怖じ気づいて帰ってしまっていたかもしれないと思った。
からかわれるのが嫌で一度も口にした事はなかったが実はゲリトは昔からの池の持つ陰気な雰囲気が好きではなかったのだ。
しかし二人がどれだけ待っても少女は現れなかった。ゲリトはもしかするともうその少女はどこかへ移動してしまっていて現れないのではないかと思いはじめる。しかしギリギリまで粘ろうと言うヴァスティに付き合ってそれから1時間ほど辺りを窺いながら待ちつづけた。
「全然現れないな」
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