虹がかかる場所に冒険はある

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ゲリトはうっそうとした水草の影で何かが動いたような気がしてヴァスティに声をかけた。動物が動いたにしては影が大きすぎる。二人ともここら辺では小動物しか見たことがない。ゲリトが目配せをして方向を知らせるとヴァスティもその方向の靄を食い入るように見つめた。 「なんだ…」 「あれ、あそこの水草の影」 「水草だらけだぞ。どこらへんだ?」 ブツブツ囁きあって二人が必死になっているとゲリトが最初に見つけた場所より二人に近い場所の水草があからさまにガサガサと音を立てた。 「「あ…。」」 二人がはっとして目を見開いたままそこを凝視するとその水草の中から小柄な人のシルエットが現れた。 二人が息をのんでそれを見守るとシルエットはついに少女へと姿を変えた。 そして少女は独特で優雅なゆっくりとした動作で二人の前に現れた。 しどけなく編み込まれたシルバーブロンドの髪が神々しいほどに輝きその横顔のふっくらとした頬はすこし血の気は薄かったが年頃の女というよりはまだ幼い子どもを彷彿とさせる。 「うわ…。」 ゲリトが思わず声をあげたヴァスティと一緒になってポカンとその少女に見とれているとその声が届いたのか少女がふわりと二人の方を振り返った。 引き結んだような薄い唇は赤く全体には幼い顔立ちだが長い睫毛がふせられたヘーゼルの瞳はアンバランスに色っぽい。     
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