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「…私はボザ。ゲリト、ヴァスティ、私と会った事は誰にも言わない方がいい」
少女はボザと名乗ると落ち着き払って二人に忠告をして一度目を伏せた。
その無言の瞬間でヴァスティはもうひとつ彼女に尋ねる。
「どうして?君はどこから来たの」
するとボザは黙って背後の池を指さした。
さっぱり意味がわからすゲリトとヴァスティは顔を見合わせたがふたりともピンと来ずヴァスティが聞き返した。
「向うってことは隣の村とか?」
するとまたボザはだまって首を左右に振った。
二人は困惑してまた顔を見合わせたがどちらにもよい仮説は思いつかなかった。
「山奥の女に気をつけて」
そしてボザはそう一言、しかし今までのどの言葉よりもはっきりと二人に念を押すように告げると無表情のままヴァスティの唇にそっと人差し指を押し当てた。
ヴァスティが驚きのあまりに目を白黒させて固まるとボザは背伸びをしてあろうことかヴァスティの唇に触れるだけのキスをする。
それからボザはあっけにとられるゲリトに向き直ると無言で数秒間ゲリトを見つめ二人に向かって「秘密。」と囁いた。
そして黙って朝霧の中に消えて行った。
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