虹がかかる場所に冒険はある

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彼女の身体が霧ですっかり見えなくなったその一瞬うすぼんやりと霧の中に彼女のシルエットがまるで巨人のように大きく浮かび上がったように見えたゲリトははっとして目をこすったがすぐにその影は消えた。 しばらく呆然と立ち尽くした二人は遠くから聞こえる鶏の声で我に帰ると大慌てでそれぞれの家に駆け戻った。 「…んもうゲリト聞いてたか!彼女の唇!それは柔らかく甘く…」 それから丸一日ヴァスティはゲリトに向かってひたすら同じ話を繰り返していた。 ボザに出会った事は秘密と言われたのを忠実に守った結果、話せる相手がゲリトしかいないのだ。 村の寄り合いで使う広間の隅でゲリトがそろそろ家に帰ろうかと呼んでいた本を閉じた頃にもまだヴァスティはボザの話を続けていた。 「ああ。それで20回目だよヴァスティ」 「ボザが秘密って言ったからお前しか話せる奴いないんだぞ!真剣に聞けよ!俺のフ、ファーストキスだぞ!あんな美少女からのキスで始まる俺の恋愛遍歴!幸先よすぎだろ!!」 「ああ、そうだね。ちゃんと聞いてるから回数が答えられるんだろ?」     
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