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「ただいま」
「あなた遅かったのね。きっと子ども達は待ちくたびれてるわ」
豊かな赤毛の髪をきっちりと編み込み少しそばかすのある顔をほころばせた妻の出迎えにゲリトの父は背負っていた緊張感をふっと緩めた。
帰るべき家に明かりが灯っている事はなんという幸せなことか。
ゲリトの父は年下の愛妻の頬にキスを贈ると子ども達のことを尋ねた。
「ああ、そうか。今日はヴァスティが来ていたんだったね」
「ええ。二人で部屋にいるわ」
「あの子達もずぶん大きくなったな」
「ええ。今にうちなんて飛び出して行ってしまうわ」
「そうだな」
ゲリトの父だけでなく寄り合いに集められた村の大人達は今夜は幾分帰りが遅かった。あまり喜ばしくない事件があったのだ。寄り合いの議長であるゲリトの父はもろもろの処理で他の出席者よりさらに遅い時刻での帰宅になっていた。
ゲリトはあまり目立つ存在ではないが村でも評判の可愛らしい顔立ちの母によく似た中性的な顔立ちをしている。今もその名残は十二分にあるがそんなゲリトを守るためゲリトの父は幼い頃からゲリトをまるで娘のように過保護に厳しく育てていた。
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