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二人の住む村は標高の高い山々に囲まれたのどかな農村だ。
そしてここは今なお妖精や神々が息をひそめる数少ない場所として知られている。とはいえ近頃はすっかり姿を消してしまった妖精や神々達の行方を知る者は少なく、ここの村人でさえゲリト達の年頃の子どもともなれば生まれて一度もそういった類いのものを見た事がないという。
「忘れたんじゃない。俺はちゃんと来ただろ。お前が早く来て黙々と働くから先に片付いちまっただけだろ!お前は真面目過ぎるんだよ。もっと人生余裕を持ってだな…」
「お前は余裕がありすぎるんだよ!僕はもう自分の分はやったから!あとは知らないぞ!」
村のおおらかな大人達の中、少々のびのびし過ぎて育ったヴァスティを叱るのはいつからかゲリトの役目になっていた。
「ゲリト…そんなつれないこと言うなよー!俺はお前がいつもちゃんとしてくれるから」
「もう、僕は、知らない!」
「あ!!!そうそう違う!そんなことより俺言いたい事があった!聞いたかゲリト!!」
興奮したヴァスティに両肩を揺すられるとゲリトは迷惑そうに眉をハの字にする。
「ヴァスティうるさいよ。耳の近くで大声出す必要ないだろ!聞いたかって何をだよ…」
「もちろんミズガルズの大池のことだ!」
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