虹がかかる場所に冒険はある

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ミズガルズの大池というのは二人の住む村のはずれの林の中にある陰気な大池のことだ。 それは池というよりはほとんど湖と呼んだ方がいいような大きな水たまりで、いつ見ても林の中にうっかり空が落ちてしまったようにぽっかり空の模様を映していた。 村の大人は幼い子どもたちには危ないから近づくなと口を酸っぱくして言うが、ミズガルズの大池のまわりは村の子ども達にとって大人の目のないかっこうの遊び場だ。ゲリトも幼い頃はよくヴァスティに誘われ遊びに出掛けていた。 「ヘ?お前またあそこへ行ってたのか!あそこは父さん達が危ないって言ってたしそうでなくても普通に気味悪いだろ」 「行ったんじゃない。村の奴らが噂してたんだ。明け方あの池の周りにここらの子じゃない女の子が出るって!」 「女の子?」 「何でもそれが悪い妖精だとか言って山奥のばあさんが大騒ぎしたんだとよ!」 「ばあさんってあの祈祷師の?」 ミズガルズの大池のさらに奥には少しばかり偏屈な祈祷師の老婆が住んでいた。ヴァスティを育てている教会の司祭だけは何か精霊のお祭りやら呪いの相談やらで親交があるようだったがミズガルズの大池同様、大人達は村の子どもが彼女に近づく事をよしとはしなかった。     
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