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しかし池と違って老婆は子ども達にとってもあまり魅力的に映らないらしく誰も大人の制止を振り切って山へ入ろうとはしない。
ゲリトも幼い頃一度だけ父親の影から老婆を見かけたことはあるが、なんとも神経質そうな仕草とぎろりと光る眼光が恐ろしげな人だった。
少し大きくなって思い返せば顔のつくりは決して醜くはなかったような気がするので、もしかするとうんと若い頃は美人だったのかもしれないとゲリトは密かに思っている。
しかしもし仮にそれが本当だったとしても老婆はとても会いたいと思えるような人物ではない。
ヴァスティも老婆についてはゲリトとほぼ同じようなことを思っていた。
「そうそう!」
「その女の子をばあさんが見たってことはここら辺までばあさんが降りて来てたってことだろ?気味悪いよ。…お前またなにか企んでるんだろ?」
「なんでわかったんだよ!」
「いつもの事だろ」
呆れたように言うとゲリトはヴァスティにピッチフォークを持たせすでに山になった干し草に腰をおろした。
ヴァスティは話しながらピッチフォークをそれとなく羊用の柵に立てかけ逃げようとしたがゲリトが飛ばす無言の圧力にすごすごと干し草をかき集めはじめる。
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