2人が本棚に入れています
本棚に追加
翌朝、わくわくと不安で落ち着かない気持ちで目覚めたゲリトは眠い目をこするとぼやけた視界で机の上の時計を見て小さくため息をついた。
起きようと思っていた時刻よりも一時間も早く目覚めてしまったのだ。
しかし二度寝すれば寝過ごすはめになるだろう。
夜のうちに枕元に出しておいた洋服は母親が小綺麗に洗ってくれたものだ。どうも几帳面であるらしい母親のくせで衣類という衣類は妙にきっちりと真四角に畳まれているがゲリト本人はさほど気にしてはいない。
身支度も早々に寝癖も目やにもつけたまま読みかけの本を一冊抱えるとゲリトはこっそり窓からまだ暗い村へ飛び出した。
音もたてず村のはずれまで行くと想像していたより肌寒くゲリトは上着を持って来なかった事を後悔した。
おそらくヴァスティは約束の時間よりも少し遅れてくるだろう。
ゲリトは両袖の裾をむりやりひっぱりむき出しの手を覆うと持って来た本を読みはじめた。
「おーい…ゲリト!」
大きすぎる内緒話のような声で叫び軽やかに走って来たヴァスティはしっかり上着を着込んでいる。
こうゆうところは大人達の話を盗み聞いてばかりいるヴァスティの方がきちんとしていた。おおかた村の母親達の注意をちゃんと聞いたのだろう。
「ヴァスティ?」
「待ったか?」
「ああ、少しね。」
最初のコメントを投稿しよう!