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寒さで少し青ざめたゲリトを一目見るとするとヴァスティは首をかしげた。
それからニヤニヤと笑いながら座り込んだゲリトを起こそうと手を差し伸べた。
「なーんだ。あんなにしぶっといてお前の方が張り切ってるじゃないか」
「なに言ってるんだお前が遅れて来ただけだろう?」
文句ありげな顔をしながらもその手を掴んだゲリトを引き起こすとヴァスティはその手の冷たさでかなりの時間待っていたのだと確信した。
腕時計では実際ヴァスティは5分ほどしか遅れていなかったのだから顔色が悪くなるほど冷える訳がない。
ゲリトの身体がよく見ると微妙に震えているのを見つけるとなんだか無性に可笑しくなったヴァスティは思わず吹き出したがゲリトは怪訝そうな顔で本を抱え直した。
「お前、寒くないの?」
「いやまさか」ゲリトは肩をすくめた。
「…そうか。もうちょっと近くへ行こうぜ。せっかくここまで来て見逃したんじゃあ話にならない」
ヴァスティのその言葉でミズガルズの大池の周りの木立ちに身を潜めた二人はしばらくきょろきょろ辺りを見回した。
「なあ、どんな子だと思う?」
「いや、わからないよ。でも美少女だって言われてるんだろ?」
「他の村からうちへ来る途中ならまだ到着してないのはおかしいよな。」
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