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 ボクたちには名前がない。  だからボクたちは互いに「兄弟」と呼び合う。  ボクにとって兄弟が兄なのか弟なのか分からないように、兄弟もボクがどちらかなんて分からなかった。  生まれたときから、ボクたちはずっと一緒だった。  昔はこの小さな部屋の中にたくさんの仲間たちが居た。色とりどりの模様がゆらゆらと踊っていたのを覚えている。  その中にはボクたちのお父さんとお母さんも居た。  その頃はボクらもまだ小さかったし、他にも兄弟がたくさん居た。部屋の中で走り回っては、すぐに誰かにぶつかってよく怒られたっけ。  窮屈だったけど賑やかだった。でも、少しずつ仲間が減っていって、いつの間にかボクたちだけになってしまったけれど。  長い年月が経って、ボクたちは随分と大きくなった。  たぶん、お父さんやお母さんよりも大きくなったんじゃないかと思う。  その頃のことは、あまり良くは覚えていない。
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