メトロ・マニラ

COME TOGETHER

その頃には学生運動の火が、そろそろ、のんびりした女子大にも迫っておりまして、あちこちの大学から派遣されたオルグの闘士たちがどえらい深刻な面持ちで、山のようなビラを抱えて、表向きは男子禁制の聖所に出入りし始めておりました。まき餌はみんな女の子好みの、山本圭ばりの、哀愁のあるいい男ばかりを揃えてありましたから洗脳は手もなく成功して、そのうちにはよその大学のバリケードにはまりこんで、飯炊きと慰安婦を甲斐甲斐しくこなす人まで出て来たし、学生デモがエスカレートするに従って機動隊まで出動する事態で、逮捕抑留される女子学生は、うちの大学が一番多いと言う噂でございました。大学側は流行のバリケード封鎖に恐れを成して、校門封鎖という非常事態を宣言して、自治会長だった中島小百合が、八号館に全校を召集いたしました。
「ヴォーヴォアールの言う通り、あたしたちは、確かに女として育てられた。でもそれを否定する必要はない。女であることを誇りに思う」と言う前置きに始まる、いいスピーチでございました。