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いきなり、無愛想な先生の声が遮りました。彼女は身につけている美しい物のことをもっと話したそうでございましたが、くぐもったような声で、めいりん、と答えました。
「さよか。めいりんさん。あんさんはどなたはんどす」
「わたしは・・・めいりんでございます」
「それはよろしい。何してるお人どす・・・あのな、誰が、あんさんに、ご飯、食べさしてくれてますのや」
「わたしは、ご飯は、自分で・・・お箸を持って」
「よろしよろし。えらいぼけたお人やな・・・お風呂は、終りましたんか」
「はい・・・わたしは、白い透き通った着物を着ております。湯女が、赤い靴を、履かせてくれる・・・足首にもきれいなかざり。わたしのあしは、小さい・・・赤ん坊みたいに、小さい」
衣紋のうなじに雨のしずくが流れ落ちたように、背中がぞくりと寒くなりました。テープの回転する音に交じって、胡麻油と八角の匂いがかすかに、確かに漂っておりました。
「あんさん、てん足、しといやすのか」
「はい・・・ちいさな、ちいさな、一本足の靴をはいております」
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