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真紅の繻子の靴にはいびつなかたちの細かな真珠と、トルコ石らしい青い玉がちりばめられて、蜘蛛の糸のように細い刺繍が、天空を回遊する龍の長さに、玩具のような靴を金色に取り巻いております。彼女は真珠の名前も、トルコ石という言葉も知らなかったけれど、色彩は描写いたしました。宝石のことを尋ねられると、声音には明らかな喜悦が交じり、きれい、きれい、と強くはっきりした言葉を発しました。
それからめいりんはにわかに生き生きと、一人ではない男を同時に相手するしとねのありさまを、身の冷たくなるようなあからさまな言葉で綿々と話し始めたのでございます。親と一緒にラブ・シーンを見ているような恥ずかしさは感じながらも、私は静かに聞いておりました。
強烈に香るインドの催淫剤が部屋にたちこめて、白い煙になって濃厚に澱んでおりました。そばのテーブルには藍色の陶器のさかづきが倒れて、白い濁り酒がこぼれ出している。私の声は何か見知らぬ、短い言葉を何度もつぶやきました。誰かの名前のようでもございました。寝台の足元に、赤く丸く熟れた果物がいくつか、齧りかけの小さな歯型を見せて転がっております。寝台の天蓋から滝のように流れる、透明な真紅のとばりの向こうに、取り付かれたような貪婪と果てしない愉悦が永遠のように続いて、やがてめいりんは何を聞かれても返事しなくなりました。
「多分、疲れて寝てはるのやろ」と、先生はテープを止められました。
「お嬢ちゃん、中々色っぽい夢でございますな」
「・・・夢でございますか」
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