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有名な宗教家はみな男はんだけに、世の中も男に都合よう出来ておりますな。早い話が、男は女を強姦できるけど、女はちと無理どすな。手ぇ出してもらうのじいと待ってるしかない。不公平どすな。ま、中には、『うちはそんな辛気臭いのん嫌や』て、きっちり男はん取り込むお方もおすな。大抵、ひも、ジゴロ、髪結いの亭主たら呼ばれて、博打うちのすけべで、中々ええ男、ていうのが相場でございます。大酒飲み、て言うおまけも、ままついておりますな。
男の愛は博愛で、女の愛は渇愛でございます。女の情は男より激しいさかいにな、女はみんな、渇愛に泣きながら生きておりますのや。あんさんみたいに情の濃い女は、ぶち当たる壁も、ひとしお強うございますえ」
「はい」
「あんさん、いつかもう一度、あてをお訪ねになる。何かにすがりつきたい、何かに救われたい、そうお思いになることが、いつかきっとございます・・・何もないなら、それはそれで結構な人生かも知れまへんけどな。幸福というのは、快楽のことではございません。そやけど、あんさんはお幸せな結婚おしやす。間違いおへん」
「ありがとうございます」
「何をもって幸福と呼ぶかは、ご自身のとらえ方でございます。そやけど、身を焦がすような煩悩にこそ、生きる価値があることが、いつかもっと年取ったら、あんさんにもきっと分かります」
「はい」
「浮世の知恵では、何が真実で何がそうでないのか、何が罪で、何が罪でないのか、凡人には分かりまへん。多分お釈迦はんでも、生きといやしたあいだは、ご存知なかったんやないか。あては、そう、思いますけどなあ。
お時間でございます。お作はん、お次の方、お通し、しとくれやす」
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