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おりませんでしたから、つくづくありがたいスーパースターではございました。バスケット・ボールは、私と母の親子二代でございます。私の母はその世代の女には珍しいほどの大柄で、娘と同じ背丈の上にかなり太っておりましたので、女学校時代は「バスケットでもしてんと、カッコ悪かった」そうでございます。
それはさておき、小百合が家に遊びに来るたびに、お向かいのお米屋に酒屋のおっちゃん、伯父や父は、「中島さんは、李香蘭の若い時によう似たはる」と嘆息し、孝太郎と真也は、「中島さんは、女にしとくの勿体ない」と申しておりましたが、女だけの学校では一部上級生から、「中島さんは毛唐好み」、「愛人タイプ」、「教授キラー」、「横須賀や沖縄基地あたりで割と見かけるタイプ」などとやっかみ半分、何かにつけて噂に高い人でございました。でもどこをどうしたところで、まぎれもない「名家の令嬢」の雰囲気に気おされて、みんな、しぶしぶながらも一目置いておりました。
「名家の令嬢」は、そこは旧い土地柄、「何何小路さま」、「御所のお西の某さま」などの方が学年に一人ならずおいででございました。某小路さまは、そのころ流行の腰まであるストレートの髪をした華やかな美人で、それこそ「ゆりちゃん」仕入れの趣味の良い服に外車でご通学と、それでなくとも人見知りの私など気後れして、滅多にお話をしたことさえございませんでしたが、中島小百合とはキャンパスで行き会うと、
「あら、不良少女。夜遊びが過ぎるんじゃない? お化粧ののりが悪いよ」
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