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「ふん、女同士で踊って何するのさ」
「そこはあなたの伎倆で、男、集めてくれ」
「ほう、君はあの頼りない、コマシの、びんぼの、どうしようもない藤田徹を、パートナーに仕込みたいのね」
「小百合さんは、大原くんがいるからええよな」
「大原くん?・・・あんなの欲しい?」
「欲しいわい」
「彼、ダンパのエスコートには、ぴったりいい男だもんね」
「あなたの取り巻きはみんなあのタイプやな。長身ハンサム、スポーツマンで、金持ちで」
「あたし、ガキは嫌い」
「・・・うらやましい」
「あなたには、ダンス名人の綿倉さんがいるじゃない」
「綿倉さんは、学生のダンパなんか、来てくれはらへんもん」
そんなこんなの後、藤田徹と初めて踊ったのは、二年生の初夏、西宮の山の上にある学校の、バスケット部主催のダンス・パーティーでございました。私はその夜、二晩徹夜で縫い上げたバーゲン布地の白い服を意気揚揚と着こんでおりましたが、小百合のぱきっとした赤いジバンシーのドレスの傍では、いかにもぐんなりとみすぼらしくて、一晩中憂鬱でございました。
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