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徹は、小百合、美佐子、麗子と次々にぎこちなく何曲か踊ってから、やっと、「岡本さん、俺はダンスは下手やけど」と、恥ずかしそうに誘ってくれました。確かに何の曲でもみな同じステップで、がちがちに緊張しているらしく、リードしてくれるというよりは、今すぐ逃げたがっているようで、どうにも踊りにくうございましたが、ロマンティック・タイム、薄暗くなった体育館に流れて来たバラードは、ペリー・コモにプラターズ、フランク・シナトラにビング・クロスビー、そして、我らが青春の輝き、エルビス・プレスリー。
徹のライフ・ソングの「愛さずにはいられない」が流れて来た時、彼の体がふっと柔らかくなって、遠慮がちながらも私の背中に回した手に、暖かな、海のような力を感じました。
徹の胸は、ソフト・クリームのような匂いがしておりました。
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