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「毎年、暮れとお中元セールの学生アルバイトには、一日でおいどまくるお嬢さんは、一人や二人必ずあります。岡本さんは新記録です」と笑いながら、五時間分のバイト代二百八十円を、申し訳なさに小さくなっている母に渡して下さいました。お昼休みの一時間は抜いてございました。
真也と徹の剣道部も、孝太郎の応援団も一夏中の合宿で、誰もかばってくれる人はおりませんでした。歯医者の山村先生だけが、「由美子さん、嫌なことは、せんでもよろしいのやで」と優しく言ってくれましたけれど、あんまり慰めにはなりませんでした。
綿倉さんは、この尻まくり事件を兄から聞いた時は、
「何やて、ゆりちゃんのハンドバッグが欲しかったん。そんなもん、僕がいくつでも、買うてあげますがな。しかし、わははは」と、涙流さんばかりに笑いました。笑いすぎてお腹が痛い、と言いながらも、「お父さんに叩かれて痛かったでしょう」と、右の頬をちょっと撫でてくれました。彼のふっくらした指にかすかな煙草の匂いがいたしました。
でも子供の時から、父の平手打ちは、ぎっちょではないのに左手と決まっておりました。
「女は結婚、何が何でも結婚」という、多少はエキセントリックな家風のくせに、この事件は深刻に受け止められて、
「えらい育て方してしもた」
「お父さんが甘いさかい」
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