FREE AS A BIRD

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 居続けは鶏箔には「勉強」。のんびりした家庭では味わえない刺激と、日々新鮮な題材にのめり込んで家を空けること数年。「他の女の誰の寝床にいようと、この世で一番大事な女やった」友恵は、鶏箔の弟子、出入りの画商、遠縁の三校生、と手当たり次第に浮名を流して、無念に耐えかねての懲ちゃくにも、ほどけた束髪を撫でつけもせず、大きな美しい目をまっすぐに向けて、 「あんさんがしたはること、あてがして、何が悪うございますのや」  その声はやるせなく甘く、振るいつきたいほど愛らしい。 「あてのことお嫌なら、いつでも実家に帰しとくれやす」  鶏箔は男泣きに泣いた。と申します。妻という名の恋人の不貞は死ぬほど辛かった。 色の地獄。ああ、なむ阿弥陀如来、救いたまえ。この煉獄を取り除きたまえ。鶏箔は御仏にすがりつく。そして何年かの逡巡の後、鶏箔の画風にえも言われぬ澄明な色彩が現れたころ、友恵は流産。 「どうせ、あんさんの子やおへんやろ」  鶏箔は制作と御仏に没頭。友恵は重度の糖尿病に逃避して、生涯入退院を繰り返します。去年日赤病院で亡くなりますまで、友恵伯母は年は取っていても凄味のある美人でございました。鷲鼻の横顔には剣高な気性がそのまま現れておりました。きずいきまま、と言う京言葉とおりの女で、私の母はこの義姉が大嫌い。母ばかりでなく親戚中の女たちは、この人のことを少しも良くは申しませんでした。     
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