FREE AS A BIRD

12/15
前へ
/591ページ
次へ
「友恵さんはあほや、淫乱や」と、これは御池通りの建具屋へ養子に入っている次男の妻。従兄はここにも三人。 「友恵さんは新しい女やねんて。そやけどきれいなお人やもの、男はんが放っとかへんのどす」と、これは三男の、五条通りの仏具屋の嫁、咲子と真也の母。 「なあ義姉さん、そう思うと、ちょっと、けなるおすなあ。うちら、亭主見返してやりとうても、相手なかったら出来ひんもんなあ。やむなく貞女、いうとこどすなあ」と、これは桂の農家に嫁入りしている叔母。この人は昨今の土地ブームでざくざくお金が入ってきて、まずは平和にのんびり暮らしていて、ここにも男女二人のいとこ。 「やむなく貞女。ほんまやわあ。うまいこと言わはる」と、ころころ笑うのは四男の悉皆屋の妻。私の母。 「義姉さんは、また暢気なこと。鶏箔は並みの男とは違います」と、これは独身の数学教師、末っ子の千代子叔母。 「芸術家の妻には苦労はつき物。独身の私が言うのはおかしいやろけど、ひとかどの男にはみな、なくて七癖。兄さんは兄さんで生みの苦しみがありますのや。友恵さんは親戚の恥」     
/591ページ

最初のコメントを投稿しよう!

23人が本棚に入れています
本棚に追加