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「あなたたちのせいじゃ無いわ……。そんなに自分を責めないで。」
(お母さん……。)
母が泣いている。ユイは声を掛けるべきか、迷った。
「でも……でも……私達と行ったから……。」
以前のナオミからは想像もつかない程か細い声。
「私達と遊園地なんて行ったからユイは……!!」
ガチャンと音がして、テーブルに置かれたティーセットが揺れる。ナオミが立ち上がったのだ。あんなに泣いている彼女を見るのは保育園の運動会以来だ。1番でゴールする直前にこけてビリになってしまったユイの代わりに、彼女は泣いた。そう、あの時彼女はユイ以上に泣いていた。
「ナオちゃん……。仕方無かったのよ。ユイの事は。仕方無かったの。」
ナオミを宥める様に母も立ち上がる。
「だって、だってユイだけ死んじゃうなんて!皆一緒に乗ったのに、ユイのロックだけ壊れるなんて……!!」
母に縋りついてナオミが叫ぶ。彼女の言葉に、リョーコとナツキも嗚咽を上げた。
(嫌われた訳じゃ、無かったんだ……。)
ユイも泣いていた。それは死にたいと思っていた自分がもうこの世にいなかったからでは無い。生き返る事が出来ない事を嘆いているからでも無かった。ユイはただただ安堵していた。自分が死ぬまでの事が『本当』だった事に。今迄が『嘘』だった事に。
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