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後付けの理由
ユイは膝から崩れ落ちた。両手で地面に手をついて何とか身体を支える。目の前にはリョーコが、ナツキが、ナオミが立っている。以前の様に3人で。けれども3人ともユイに背を向けて。
「そろそろ行こうか……。」
ナオミの言葉に2人が頷き、クルリと振り返る。3人は四つん這いになったまま、荒く呼吸をするユイの隣をすり抜ける。
(どうして?)
ユイの目から、涙が溢れ出す。両手はブルブルと震えている。荒い呼吸が涙で更に乱れる。ユイと、3人の距離は徐々に、けれど確実に離れて行った。メリーゴーランドの暢気な音楽が始まり、遠くでジェットコースターの轟音と歓声が上がった。
「今日はわざわざありがとう。」
母が少しだけ微笑んだ。顔を見ない様に生活していたからだろうか、母の顔に違和感を感じる。痩せたのか、老けたのか、何だか他人の様だ。ユイは扉の影で思う。
「私達こそ本当に済みません。此処に来る、勇気が無くて。」
母から受け取った紅茶のカップを手に持ったまま、ナツキが声を震わせる。
(ナツキ……?)
ソファの角度でその表情は見えない。
「おばさん、ごめんなさい。ごめんなさい……。」
リョーコの声だ。ナツキ以上に声が震えている。
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