雨の日の幽霊

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「――ていうのが、夏休み前くらいから噂になってた雨の日の幽霊の話なんだけど。今度、これを記事にしようと思って」  と嬉しそうに前田が語り終えた。  夏休み明けの久々の部室、静かに本を読んでいたらいつの間にか新聞部の前田が怪談をしていた。前田はいつも突然だ。  俺は読んでいた本を机にそっと置いて、怪談の感想を前田に伝える。 「くだらない怪談だな。俺はもっと派手な方が好きだ。オチも弱いし。いっそのこと幽霊を血みどろにしよう」  我ながらなかなか良い提案だ。 「ふふーん、これ実体験の話だからね。リアルな怖い話ってこのレベルだよ、白石くん。この噂、実は私の友達が本当に体験したことなんだよ」 「前田、お前高校生にもなって幽霊なんか信じてるのか?」  小馬鹿にするように俺が言うが、前田は余裕の顔を崩さずに言い返してきた。 「まだ高校生のくせに全てを知ったようなことを言うのかい? 青いねー白石くん」  ぐぬぬ。 「幽霊じゃないと思うんなら証明できるよねー? 調査してさー」  前田が挑発してくる。こうなったら俺がどんなに反対しようと押し切られる。俺は早々に諦めることにした。 「前田、新聞部の記事に協力するんだから報酬はあるんだろうな」 「いいよー。他校の女子との合コンをセッティングしてあげるってのはどう?」 「交渉成立だな。よし、調査開始だ!」  ところで合コンってどうすればいいんだ。地味な文化部所属の俺には難しい問題だ。
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