雨の日の幽霊

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 俺の名前は白石。読書部に所属している高校一年生。特にこれと言って取り柄のない地味な男だ。  新聞部の前田は同じ一年生だが、一年生にして新聞部の部長をやっている。というのも、新聞部は前田しかいないからだ。だから時々、こうして新聞部の取材に暇な読書部が協力しているというわけだ。ちなみに前田は女子だ。  俺と前田は旧校舎の美術準備室に向かって歩いていた。 「夏休みも終わったけど、まだまだ暑いねー」  前田が額の汗をぬぐいながら話しかけてきた。 「確かに年々、暑くなってる気がするな。夏休みの間はクーラーの効いた自室でずっと読書をしていたから天国だったが」 「はぁー、白石くんは地味な夏休みを送ってたんだね。もっと青春しようよ。クラスの皆みたいに夏休みデビューしようよ!」  俺の青春にダメ出しするんじゃない。だがクラスの皆の夏休みデビューには驚いたな。 「夏休み前は地味な眼鏡女子だった佐々木さんが、コンタクトにして化粧もして髪型も変えてオシャレ女子になってたな。本当に同一人物かどうか疑ったぞ」 「女の子は化粧と髪型でガラっと変わるもんだよー」 「個人的には地味な眼鏡女子だった佐々木さんのほうが好きだった」  幽霊は派手な方が良いが女子は地味な方が良い。 「童貞くさっ」 「はは、当然だ。童貞だからな」  そんな馬鹿な話をしてたら旧校舎に到着した。改めて見ると古いコンクリート造りのボロい建物だな。
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