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壁紙の調査はこれくらいにして、他の部分も調べてみる。
棚には石膏像や写真、古いトロフィーなんかが無造作に並べてある。大きな鏡もあった。多分、自画像を描く時に使うんだろうな。
俺があまり音を立てないように棚を調べていると前田が小さい声を上げた。
「白石くん、これ髪の毛じゃないかな」
見ると床に細い黒い糸のような物が落ちていた。拾い上げようとしたが、静電気で床にくっついているのか、なかなかつまめない。
ようやく拾い上げて調べてみる。食感はスベスベしていて光沢がある。長さは30cmくらいか。
「前田の言う通り髪の毛かな。この長さだったら恐らく女子か」
「でも美術部には女子はいないんだよね?」
「そうだな。だけど壁紙にファンデーションがついていたし、この長くて綺麗な髪の毛もある。どちらも割と新しいし、この部屋に女子がいたのは間違いないだろう」
俺は拾い上げた髪の毛をポケットに入れた。
「やはり目撃された女子は幽霊じゃない。幽霊が物的証拠を残すわけがないからな」
少し進展ありといったところか。
その後も色々と調べたが、美術準備室で気になることは他にはなかった。
調査を終える頃に、前田のスマホが鳴った。
「友達が呼んでるみたい。ちょっと行ってくるねー」
前田はそそくさと行ってしまった。仕方ない、一人で調査を続けるか。
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