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「地多さん、美術部って先輩たち三人だけなんですか?」
「そうだよ。僕と鈴木と佐藤、この三人で全員。だから新入部員はいつでも歓迎だよ」
「女子はいないんですよね。珍しいですよね、美術部って女子に人気ありそうなのに」
そう、普通はどこの学校でも文化部は女子が結構いる。美術部なんて特に女子がいそうな部活なのに。
「それはだな一年! うちの顧問が女子にめちゃめちゃ嫌われてる須藤だからだよ!!」
鈴木がまたも大きい声で教えてくれた。うるさい。
須藤先生は青ひげの目立つ四十代の男性教諭だ。ねちっこい喋り方と独特の目つき(女子いわくいやらしい目つき)で女子ウケが非常に悪い可哀相な先生だ。
「良い先生なんだけどね。女子の評判は別にして、問題を起こしたこともないし、優しい先生だよ」
地多がフォローしてくれた。俺もそう思う。
「じゃあ先輩たちの女友達が美術部によく遊びに来るってことは?」
俺がそう聞くと三人とも口をつぐんでうつむいた。
「僕たちに女友達なんて存在しないよぉ」
か細い声でデブ・THE・佐藤が漏らした。俺も似たようなもんだ。地味な文化部はモテない。イケメンでもないし。
しばらくモテない談義で盛り上がったが、割愛する。
「そういえば雨の日は、美術準備室の隣の空き教室を女子テニス部が使ってたと思うよぉ」
佐藤が思い出したように言う。
「じゃあ女子テニス部のイタズラだな! 美術部はなーんも関係ねぇ! 全く女子ってのは……」
鈴木の一言で、またモテない男どもの女子への恨み言が始まった。
しかし女子テニス部か。そういえば前田から聞いた話では、テニス部の友人が幽霊を目撃したんだったな。ふむ、可能性はあるか。
女子テニス部が自分たちで噂をでっち上げたんだ。真相なんてそんなもんさ。
一通り美術部で話をした後、旧校舎を後にした。調査はこれくらいで良いだろう。読書部に戻ろう。
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